グアテマラやコスタリカなど、コーヒーの産地として有名な中米。
あまり知られていませんが、じつは中米で一番多くのコーヒー豆を生産しているのはホンジュラスです(世界でも第7位の生産量)。
2022年 コーヒー豆の生産量(抜粋)
順 位 | 国 名 | 生産量(トン) |
---|---|---|
1 | ブラジル | 3,172,562 |
2 | ベトナム | 1,953,990 |
3 | コロンビア | 665,016 |
4 | インドネシア | 794,762 |
5 | エチオピア | 496,200 |
9 | ホンジュラス | 364,552 |
12 | グアテマラ | 225,500 |
15 | ニカラグア | 170,181 |
17 | コスタリカ | 79,200 |
27 | エルサルバドル | 30,653 |
生産量だけでなく、近年ではその品質に対する評価も高まっています。日本での流通量も増えており、今後の動きにも目が離せないホンジュラス産のコーヒー。その特徴や味わい、産地などについてまとめました。
おすすめのコーヒー豆も紹介していますので、ホンジュラスのコーヒーに興味がある方は、ぜひご覧ください。
- 日本安全食料料理協会(JSFCA)認定
コーヒーソムリエ - 日本技能開発協会(JSADA)認定
コーヒープロフェッショナル - 年間2,500杯分以上コーヒーを
淹れる人
- 日本安全食料料理協会(JSFCA)認定
コーヒーソムリエ - 日本技能開発協会(JSADA)認定
コーヒープロフェッショナル - 年間2,500杯分以上コーヒーを淹れる人
ホンジュラスとはどんな国?
ホンジュラスは、有名なコーヒーの名産地である中米に位置しています。その国土は日本の1/3程度で、グアテマラやエルサルバドル、ニカラグアと国境を接しています。
国土の約80%が山岳地帯であり、ミネラル豊富な火山性土壌を形成。さらに、雨季(6月~11月)と乾季(12月~5月)がある温暖な気候で、コーヒーの栽培に適した地理的な条件がそろっています。
コーヒーはホンジュラスの主要な輸出品目のひとつで、国内には約10万の小規模農家が存在します。
以前は、スーパーなどで見かける安価なコーヒー(=コモディティコーヒー)が中心でした。しかし最近では、高品質なスペシャルティコーヒーも増えており、日本への輸出量も増えています。
日本のコーヒー生豆の国別輸入量(抜粋)
国 名 | 2010年 | 2021年 | 増減割合 |
---|---|---|---|
ホンジュラス | 6,333t | 10,162t | +60.5% |
グアテマラ | 34,180t | 19,913t | ▲58.3% |
コスタリカ | 3,960t | 1,303t | ▲32.9% |
ブラジル | 123,073t | 146,243t | +18.8% |
コロンビア | 79,060t | 47,670t | ▲60.3% |
ホンジュラス産コーヒーの特徴【魅力的な産地ごとの違い】
ホンジュラスのコーヒーは、すっきりとした爽やかな酸味と、甘く優しい後味が印象的。精製方法は、ウォッシュドが主流です。
関連記事>>>コーヒー豆の精製方法4種類を解説|風味や味わいを左右する大事な要素
また、ホンジュラスで採れる高品質な豆は、
- 口に含む前の香り
- 口に含んだときのフレーバー
- 飲み込むときの質感
- 後味や口中香(含み香)
この各段階で、さまざまな表情を見せてくれます。そのため、ポジティブな意味合いで「複雑」と表現されることがあります。
そしてもう一つ、ホンジュラス産コーヒーの大きな魅力が、産地ごとに微妙なニュアンスの違いを楽しめること。ホンジュラスコーヒー協会(IHCAFE)は、その特徴ごとに産地を6つに分けています。
このほか、「サンタバルバラ」も有名な産地として名前があがることがあります。しかしこれは、日本でいうところの「サンタバルバラ県」という行政区画としての地名です。
サンタバルバラはIHCAFEでの産地の区分には該当せず、コパンやオパラカ、モンテシージョスにまたがって分類されています。
国際競争力の強化と、それに向けた品質管理(高品質化)などを目的として1970年に設立。
それぞれの地域で栽培されたコーヒーの特徴について、その特徴を見ていきましょう。
コパン
- 標高
-
1000~1700m
- 品種
-
- ブルボン
- カトゥアイ
- パカス
- レンピラ
- IHCAFE 90
- 風味の特徴
-
- 甘い香り
- チョコレートのような風味
- バランスの取れたなめらかな質感
- 甘く余韻が残る後味
オパラカ
- 標高
-
1100~1700m
- 品種
-
- ブルボン
- カトゥアイ
- レンピラ
- ティピカ
- 風味の特徴
-
- きめ細やかで繊細な酸味
- ぶどうやブラックベリーなどのトロピカルフルーツの風味
- バランスがいい
- 柑橘系の後味
モンテシージョス
- 標高
-
1100~1700m
- 品種
-
- ブルボン
- カカトゥアイ
- レンピラ
- パカス
- 風味の特徴
-
- フルーティーで甘い香り
- 生き生きとした明るい酸味
- 柑橘系やピーチのフレーバー
- ベルベットをイメージさせるなめらかな質感
- 余韻が残る後味
コマヤグア
- 標高
-
1200~1700m
- 品種
-
- ブルボン
- カトゥアイ
- レンピラ
- パカス
- 風味の特徴
-
- フルーティーで甘い香り
- 生き生きとした明るい酸味
- 柑橘系やピーチのフレーバー
- ベルベットをイメージさせるなめらかな質感
- 持続的な余韻
エルパライソ
- 標高
-
1100~1700m
- 品種
-
- カトゥアイ
- カトゥーラ
- パカス
- パライネマ
- レンピラ
- 風味の特徴
-
- 甘い香りと滑らかなボディ
- 柑橘系の風味
- 余韻が残る後味
アガルタ
- 標高
-
1100~1700m
- 品種
-
- ブルボン
- ティピカ
- カトゥーラ
- レンピラ
- 風味の特徴
-
- キャラメルのような香り
- 様々なトロピカルフルーツのフレーバー
- 甘い後味
ホンジュラスで栽培される品種
ホンジュラスで栽培されるコーヒーの品種は、ティピカやブルボン、カトゥーラ、カトゥアイ、パーカスなど、高品質なアラビカ種が主流です。
そのほか、さび病にも強いロブスタ種とアラビカ種を掛け合わせた「ハイブリッド品種」も採用されており、ホンジュラス産コーヒーの味わいの特徴である複雑さ、多様性を生み出しています。
ティピカ
アラビカ種の中でも、もっとも古くから存在していると考えられている品種のティピカ。風味に優れ、甘みと酸味のバランスがいいため、後で説明するブルボンと並んで「二大優良品種」として知られています。
しかし、病虫害に弱く、管理が大変なわりに収穫量も多くありません。こうした理由から改良品種等への植え替えが進み、現在では希少な品種になってしまったティピカ。しかし、現在流通している品種の多くがティピカをルーツにしています。
ブルボン
アラビカ種の「二大優良品種」のもう一つが、ブルボンです。ブルボンはティピカの突然変異種で、マダガスカル島の東にあるブルボン島(現レユニオン島)で見つかりました。
豆のサイズは小ぶりですが、コクや甘みが強く、芳醇な香味が特徴的。しかし、ティピカと同じく病虫害に弱く、実をつけるのも2年に1回と生産性は高くありません。そのため、より生産性の高い品種へと植え替えが進んでしまいましたが、現在の主要品種にはブルボンの突然変異種や品種改良種が多数存在します。
カトゥーラ
ブルボンの突然変異により、木が小さくなったカトゥーラ。これによって、木と木の間隔を狭めて植栽することが可能となり、1.5倍ほど多く作付けが可能になりました。
風味についてはブルボン由来の甘みや香り、そして酸味が豊かで高い評価を得ています。ホンジュラスだけでなく、他の中米諸国でも主要な品種となっています。
カトゥアイ
カトゥーラを品種改良してできたのが、カトゥアイ。カトゥーラにムンド・ノーボ(ティピカとブルボンの自然交配種)を人工的に交配したものです。
収穫量が多く低木なため管理しやすいカトゥーラの特性と、風などの悪天候に強い(=耐久性が高い)ムンド・ノーボの特性を引き継いでいます。また、明るい酸味を持つなど、風味特性にも優れています。
パーカス
エルサルバドルで発見された、ブルボンの突然変異種。
風味が豊かで豆のサイズは小ぶりであり、ブルボンの特徴を引き継いでいる特徴です。しかし、ブルボンよりも樹高が低く干ばつにも強いため、農家にとっては管理がしやすい品種。また、比較的短期間でチェリーが完熟するため、生産性が高いという特徴もあります。
こうしたことから、近年ではホンジュラスで採用されることが多くなっています。
その他の品種(ハイブリッド品種)
ホンジュラスでは、病害虫への耐性を強めるために開発された「ハイブリッド品種」も採用されています。ハイブリッド品種とは、風味特性に優れるアラビカ種と、病虫害や環境への耐性が強いロブスタ種を掛け合わせた品種。
レンピラやIHCAFE 90(イカフェ・ノベンタ)、パライネマなどが栽培されています。特に、レンピラとIHCAFE90は、ホンジュラスコーヒー協会(IHCAFE)で開発したものです。
標高で決まるホンジュラス産コーヒー豆の等級
他の中米諸国とおなじようにに、ホンジュラスで栽培されたコーヒー豆の等級は標高で決まります。
標高が高く寒暖の差が激しい場所で栽培されたコーヒーは、コーヒーチェリーに糖分を蓄えます。また、ゆっくりと成長するため細胞がギュッと凝縮されることも、優れた風味に仕上がる要因とされています。
等級 | 標高 |
---|---|
SHG (ストリクトリー・ハイ・グロウン) | 1200m以上 |
HG (ハイ・グロウン) | 900~1200m |
CS (セントラル・スタンダード) | ~600m |
ちなみに、IHCAFEの定める6つの産地はどれも、標高が1000m以上の地域です。
ホンジュラスにおけるコーヒー栽培の歴史
ホンジュラスでコーヒーの栽培が始まった時期については、明確な記録が残っていません。ただ、コーヒーに関する一番古い記録が1804年であり、収穫まで数年かかることを考えると1800年前後に栽培が始まったと考えられています。
1821年にスペインから独立。その後、同年に独立したコスタリカやグアテマラなど中米各国はいち早くコーヒーの生産量を増やす中、ホンジュラスは労働力不足により出遅れます。長い間、コーヒーよりもバナナが主要な農作物の時期がありました。
19世紀末、アメリカの資金(=外国資金)が大量につぎ込まれてバナナの大量生産が始まりました。1920年代には世界のバナナ市場の約1/3を供給するほどに。このように外資によってコントロールされ、輸出を農作物に頼る国は「バナナ共和国」と呼ばれます。不名誉な意味を持つ呼び名ですが、ホンジュラスはその第一号となってしまいました。
多くの小規模農家によってコーヒーの栽培は続けられてきましたが、品質の劣る安価なコーヒー(=コモディティコーヒー)が生産の中心でした。
1970年、国際競争力を強化するため、品質管理や輸出管理などを担う「ホンジュラスコーヒー協会(IHCAFE)」を設立。2004年からはカップオブエクセレンス(COE)を開催し、ホンジュラス産コーヒーの高品質化(ブランド化、高付加価値化)を進めています。
その年に収穫されたコーヒー豆の中から、特に高品質なものを決める国際的な品評会。初めてのCOEは、1999年にブラジルで開催。それ以来、生産国ごとに開催されるようになりました。国際審査員の審査で87点以上を獲得したものは入賞とされ、付加価値の高い特別なコーヒー豆として取り扱われます。
おすすめのホンジュラス産コーヒー豆
おすすめのホンジュラス産コーヒー豆を紹介します。
ただし、マイクロロット(少量生産しかできない希少なコーヒー豆)のため、いつ品切れになるかわかりません。公式サイトで在庫状況をご確認ください。
土居珈琲「レイナ・クラロス農園」
レイナ・ラクロス農園は、インティブカ県にある農園。IHCAFEの定める6つの産地のうち、「モンテシージョス」に属する地域です。標高は1700mという厳しい環境のなかで理想のコーヒーを追い求め、2011年のCOEで入賞を果たしました。
土居珈琲の丁寧でキレイな焙煎が、甘みと華やかな後味を一段と引き立たせてくれます。
珈琲きゃろっと「エル・ピノ農園」
キャラメルの香りが心地よく、ずっと香りを楽しめてしまうコーヒーです。
その味わいは、フルーティーでなめらかな質感や、オレンジやピーチ、アプリコットなどさまざまなフレーバーが次々に現れます。まさに、ホンジュラスのコーヒーらしい「複雑さ」が魅力のコーヒー豆です。
>>>珈琲きゃろっと「初回限定お試しセット」のレビュー記事はこちら
参考サイト・参考図書
- 在ホンジュラス日本国大使館
- ホンジュラスコーヒー協会(IHCAFE)
- GLOBAL NOTE(国際統計・国別統計専門サイト)
- 全日本コーヒー協会
- 独立行政法人国際協力機構(JICA)
- 国連Word Food Programme(WFP)
- ビジュアル スペシャルティコーヒー大事典 2nd Edition (日経ナショナルジオグラフィック社)
コメント