サファリの大自然など、野性的な印象が強い赤道直下の国、ケニア。
その味わいや香りは「上品」と評されることが多く、世界的にも高い評価を得ています。
焙煎度合いによって違った表情を見せてくれるなど、魅力たっぷりのケニア産コーヒー豆の特徴について、詳しく見ていきましょう。
- 日本安全食料料理協会(JSFCA)認定
コーヒーソムリエ - 日本技能開発協会(JSADA)認定
コーヒープロフェッショナル - 年間2,500杯分以上コーヒーを
淹れる人
- 日本安全食料料理協会(JSFCA)認定
コーヒーソムリエ - 日本技能開発協会(JSADA)認定
コーヒープロフェッショナル - 年間2,500杯分以上コーヒーを淹れる人
ケニア産コーヒー豆の特徴
ケニア産のコーヒー豆は大粒で肉厚。
そして、焙煎度合いによって全く違った表情を見せてくれるのも、大きな魅力のひとつです。
浅煎りは「明るく爽やか」
浅煎りの場合、グレープフルーツを思わせる柑橘系のシャープな酸味が特徴的です。
その風味は明るく爽やかで、とてもはつらつとした印象を持ちます。色で表現するならば、レモンイエローをイメージさせるような明るさがあります。
酸味を引き立たせる「ハリオV60」で淹れるのがおすすめ!
深入りは「力強い」
深入りにすると、浅煎りの時とは印象がガラッと変わります。
酸味はほどよく抑えられ、かわりに力強いコクと優しい甘みが感じられます。また、浅煎りのシャープさに変わり、ほのかにスパイシーな余韻が長く続きます。
ボルドーを思わせるような、上品で芳醇な印象です。
コクを引き出す「メリタ」で淹れるのがおすすめ!
ケニア産コーヒー豆のグレーディング(等級分け)
ケニア産コーヒー豆は、生豆の大きさや重さ、形によってグレーディング(等級分け)されます。特に、コーヒー豆の大きさが品質と関係が深いと考えられており、一番大きな「AA」がもっとも高い等級が付けられます。
また、コーヒーチェリー1つに対して種子(コーヒー豆)が1つしかないピーベリー(PB)も高品質な豆として扱われます。
等級 | 規 格 |
---|---|
AA | スクリーンサイズ17~18 (ふるいのサイズ 7.2mm) |
AB | スクリーンサイズ15~16 (ふるいのサイズ 6.8mm) |
PB | 希少性が高い(ピーベリー) 濃厚な風味で高品質とされる |
C | ABに満たない大きさの豆 |
E | 極端に大きい豆(エレファント) 品質は落ちるとされている |
TT | 密度が低くて軽いもの |
T | もっとも小さい豆 不完全な豆や欠けた豆も含む |
コーヒー豆の大きさに価値を見い出す方法は、隣国のタンザニアやコロンビアの等級付けの方法によく似ています。
また、ケニア産のコーヒー豆のほとんどが水洗式のウォッシュドで精製されます。コーヒーチェリーごと乾燥させるナチュラルで精製された豆は「ムブニ」と呼ばれ、取引価格が低くなってしまいます。
【関連記事】コーヒー豆の精製方法4種類を解説|風味や味わいを左右する大事な要素
ケニア産コーヒー豆の品種
ケニアで多く栽培されている品種は、高品質なSL28、SL34、そして病害に強いルイル11です。
近年、高品質で病害にも強いバティアンという新たな品種も開発されました。今後の動向に注目したい品種です。
SL28とSL34についている「SL」とは、スコット研究所(Scott Laboratories)の頭文字をとったもの。1930年代に、選別による品種改良を行っていた。
SL28
- 干ばつに強い
- 高品質
- 収穫量はやや少ない
- さび病などの病害に弱い
SL34
- 高地栽培に適している
- 高品質
- 収穫量はSL28に比べて多い
- さび病などの病害に弱い
ルイル11(Ruiru 11)
- さび病や炭素病に強い
- 収穫量が多く生産効率が高い
- 風味はSL28やSL34に比べて劣る
バティアン
- さび病や炭素病に強い
- SL28やSL34に劣らない風味
- 収穫量も多い
- 豆の大きさがとても大きい
ケニア産コーヒーの品質・産地
ケニアはアフリカ大陸にある赤道直下の国で、面積は日本のおよそ1.5倍ほど。北はエチオピア、南はタンザニア(キリマンジャロの産地)と国境を接しており、おいしい高品質なコーヒーの産地に挟まれています。
中央にはケニア山があり、その一帯はミネラルが豊富で水はけのよい火山性土壌におおわれています。
こうした地理的要因に恵まれ、評価が高いコーヒー豆が生産されています。
高く評価されるケニア産コーヒー豆の品質
ケニアでは、オークション制度や豆の格付けに関する規定の整備など、かなり早い段階から独自に品質向上に取り組んでいます。
また、SL種の開発に代表されるように、コーヒーに関する調査や開発も積極的に行われてきました。コーヒー条例の可決(1933年)やケニアコーヒー局の設置(1934年)など、国もコーヒー産業の背中を押してきました。
こうした取り組みの成果が、現在の世界的に高い評価へとつながっています。詳しくは、「ケニアにおけるコーヒーの歴史」で解説します。
コーヒーの栽培に適した国「ケニア」
ケニアは赤道直下に位置し、中央部の高地はコーヒー栽培に適した気候です。そのため、高品質なコーヒーが栽培できるだけでなく、収穫も年に2回できます。
また、ケニアのほとんどの地域でSL28、SL34、ルイル11が栽培されています。
主要な産地
産地 | 標高 |
---|---|
ニエリ | 1200m~2300m |
ムランガ | 1350m~1950m |
キリニャガ | 1300m~1900m |
エンブ | 1300m~1900m |
ケニアにおけるコーヒーの歴史
- 1893年
-
宣教師によりコーヒーが持ち込まれる
- 1896年
-
コーヒーが初めて収穫される
- 1933年
-
コーヒー条例が可決
- 1934年
-
「ケニアコーヒー局」の設置、オークション制度の確立
- 1935年
-
コーヒー豆の格付けに関する規定を制定
- 1950年代
-
「スウィナートン計画」と呼ばれる政府主導の計画により所得が向上
- 1963年
-
イギリスから独立
- 1964年
-
生産者たちが出資して、世界初のコーヒー専門研究機関「コーヒー研究財団」を設立
1893年、フランスの宣教師たちによってコーヒーが持ち込まれました。その後、産業化への動きは、国を挙げた非常に積極的なものでした。
1934年に設置されたケニアコーヒー局は、現在も法定の団体として、ケニアのコーヒー業界を監督する機能があります。
こうした積み重ねにより、高い品質へのこだわりが醸成されています。
おすすめのケニアのコーヒー
ケニア産のコーヒー豆は、焙煎度合いによって表情を変えるのがとても魅力的です。浅煎りのはつらつとした明るい酸味と、深煎りの芳醇で上品な味わい。どちらもおいしいし、それぞれに良さがある…!
ぜひ飲み比べをしていただきたいので、amazonで手軽に購入できて、好きな焙煎度合いを指定できる「ばいせん工房 珈琲倶楽部」を紹介します。
ミディアムローストのケニアAA(浅煎り)
ばいせん工房は、焙煎前の生豆時の重さで量り売りします。したがって、ミディアムローストの場合、生豆時に200gでも焙煎後に手元に届くときには180g程度になります。
フルシティローストのケニアAA(中深煎り)
ミディアムローストに比べて焙煎時間が長くなるので、生豆時に200gでも手元に届くときには165g程度になっています。「フルシティロースト」で深煎り一歩手前の焙煎度合いですが、ミディアムローストとの比較で十分に違いが楽しめます。
ちなみに、各焙煎度合いには明確な線引きがなく、じつは各店舗ごとに基準が微妙に違います。ばいせん工房ではフルシティローストとして扱っているものが、他の店舗では「シティロースト」や「フレンチロースト」として扱われることも十分に考えられます。
参考図書、参考サイト
- 在ケニア日本国大使館
- 駐日ケニア共和国大使館
- ビジュアル スペシャルティコーヒー大事典 2nd Edition (日経ナショナルジオグラフィック社)
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